株式会社杉本カレンダー

独占インタビュー

ああああ

なんともいえないキャラクターやモチーフを描く、関西在住のイラストレーター・ニシワキタダシさん。
杉本カレンダーとニシワキさんは、2015年の「かんさい絵ことば辞典のカレンダー」からスタートし、翌年からは「しりとりのカレンダー」を毎年出版。
2020年版で早くも5年目となります。これを記念し、特別企画としてニシワキさんにインタビューを敢行!
カレンダーのアイデアはどのようにして生まれているのか、こだわりや制作秘話など、なかなか聞けないあれこれをゆるーくお伺いしました。

―ではまず一番気になっている質問から。アイデアはどのようにして考えられているんですか?

しりとりがベースになっているので、毎年いつも「あ」から考え始めています。その時にまずは自分が好みな何とも言えない言葉を探すところから始めて、その絵のイメージをしながらもイラストを描くのは後にしています。例えば「あ」なら、「あいそのない」とか「あっちをむいている間に」とか、それに続く言葉も考えながらいろいろ出していきます。例えば今回のカレンダーの一番最初にもなっている「あるきつかれた○○」。何が歩き疲れていたらよいかなと考えて、今回は「いるか」にしました(笑)。頭の中で繰り返し考えて、出た言葉をメモするという流れですね。言葉がよいなと思っても、イラストにしにくいものは候補に入れずにやめます。
メモを見返してみて、自分でもわけわからなさにクスッときたりすることもあったり。この「に」から始まる「にんじんのようないろをしたスポーツカーをさっきみました」も、“だから何??”的な、わけのわからなさが自分の中で好みです。

―これを思いつかれた時の状況が気になりますね(笑)。心理状態というか…

―これを思いつかれた時の状況が気になりますね(笑)。
心理状態というか…

「に」から「にんじん」が思い浮かび、「にんじんのような色をした○○」もいいなぁと、その「○○を見ました」という終わり方もよいなと考えて、○○が「ノート」とかだとありきたりなので「スポーツカー」くらいならどうかなと、それをラッコが言ってるというのがシュールな感じもするなと、敬語にしてまとめてみました。こういう細かいところは頭でいろいろ考えながら、最終ここに落ち着いてるって感じですね。これだけ長い文章にするんだったら、「に」であることもあまり関係なくなってきてますけど(笑)。自分の好みの中で絶妙なラインになればと、言葉を探す作業には時間をかけているところではありますね。

―そうやってこだわりをもって選ばれた言葉だからこそ、見る側も楽しめるんだと思います。“おもしろいな”とか“なんともいえないな”と思う言葉はストックされているんですか?

―そうやってこだわりをもって選ばれた言葉だからこそ、見る側も楽しめるんだと思います。“おもしろいな”とか“なんともいえないな”と思う言葉はストックされているんですか?

その時に思いついたものをカレンダー用にメモはするんですけど、日頃からは言葉のストックはしていないです。でもなんとなく自分の好きなものって決まってたりするので、同じ頭文字で考えたときにどうしてもついつい出てくるとかはあります。だから頭の中に好きな言葉はなんとなくぼやっとしながらもいつもあるような感じかもしれません。 思いついたものはiPhoneのメモに入れていきます。「アシスタントがイルカ」を×にして「あるきつかれたイルカ」を選んだり、イラストの描きやすさも考えます。今年考えたものを次の年に、週めくりカレンダーとして毎週見ることになるので、1年前のアイデアが“そんなにかな…?”と思うときも(笑)。年々少しづつ感覚は変わってきてそうな気はします。

―文字ベースで溜めていって、戻って“これは違うな”と思うことはありますか?

ありますね。53週まできたら1からまた見直して、これは…と思ったものはもう一度考え直して、最終決めます。半年であまり考え方って変わらないし、すべてを頭に入れながら考えているわけではないので、見返すと一緒のものがあったりします(笑)。

―1から53週まで、流れを作る上で気にされていることはありますか?

―1から53週まで、流れを作る上で気にされていることはありますか?

最初は「短い言葉をしりとりでつないでいく」という基本的なルールを意識しながら作っていましたけど、最近は長い言葉もよいな…と増えています。長い言葉が続きすぎないように、短い言葉も入れたり、「○○の○○」みたいな言い方が続かないようにしたりなど意識はします。あとすごくシンプルなもの(「ちくわ」や「すのこ」とか)は、どこかに入れたいなと思っています。

―言葉を考えている時点でイラストは浮かんでいるのでしょうか?

言葉が浮かんだときにイラストもある程度浮かぶので、イラストの構図を一緒にメモするときもあります。数ヶ月後にまとめてイラストを描くので、メモを見返して「?」なときもあります(笑)。

―いつぐらいから、どのぐらいの時間をかけて考えていますか?

カレンダーのイラストの納期が6月ぐらいなので、その年の1月1日“年明けからやるぞ”という感じです。なので半年ぐらいかけて作っています。逆に納品して12月までは一切考えないようにしています。考え始めてしまうと枯れてしまいそうで…(笑)。他のお仕事でもアイデアを出すアウトプットしていく作業が多いので、しりとりのカレンダーのアイデア出しに関しては半年間だけに決めています。あ、別に作業がいやなわけではないです(笑)。

―カレンダー以外のお仕事で考えたものを次の年のカレンダーのアイデアを考える上で役立てたり、引用されたりすることはありますか?

―カレンダー以外のお仕事で考えたものを次の年のカレンダーのアイデアを考える上で役立てたり、引用されたりすることはありますか?

イラストにセリフをつけたりするお仕事も結構多いんですけど、カレンダーにはあまり同じアイデアのものを使いませんね。自分のオリジナルのイラストをSNSでたまにあげていて、その中で気に入ったものをカレンダーに使うときはあります。今回もSNSでの「いらないでんぴょうはしょくぱんにはさんで」というイラストを元に、新たに描き起こしてカレンダーでも使ってみました。お仕事のものをそのまま使うのは難しい場合も多いんですけど、オリジナルのイラストならできたりします。逆にしりとりのカレンダーで気に入ったものを個展の作品やポストカードにしたこともあります。

―アイデアはどんな時に考えることが多いですか?

机に向かってではなく、移動中や歯を磨いているときなど、出来るだけ合間の時間に考えるようにしています。アイデアのみなので、効率的でありながら浮かびやすかったり。考え中のしりとりの文字だけ頭に入れて、合間があったら考える感じですね。思い浮かんだ言葉をすぐにメモできないときは、メモするまで頭で繰り返し覚えます(笑)。

―考えていく中で、苦労や難しいと感じるところはありますか?

53週分と量が多く、アイデアがなかなか浮かばないときは難しいというか大変にも感じます。合間で考えているとはいえ、一週間くらい何も出てこないと焦ってきたりして、自分の好みなものが思いついたときには、ほっと安心しますね。イラストを描くのはかかる時間がある程度読めるんですけど、言葉などのアイデアを出すのは時間が読めないところもあるので、そこが難しいところでもあるかもしれません。

―アイデアを考えるときは「あ」から順番に考えていくんですか?
例えばこの文字でいいのが思いついたから置いておこう、みたいなのは?

順番に考えていっています。例えば「く」で思いついたものがいくつかあれば、それもメモしておいて、次「く」が出てきたときにメモを見返して使うときもあります。「くさってからたべてはダメ」が採用されて、「くすりともわらわない」がストックにあるみたいな感じです。昨年分のメモをさかのぼってチェックするときもあります。お仕事にはあまりないですが、このメモのストックからオリジナルのイラストのアイデアとして使うときもあります。

―“カレンダーならでは”で意識されていることは何かありますか?

カレンダーならではで意識されていることは何かありますか?

季節が関係したものが浮かぶ時もあって、そのイラストが載る時の季節がいつかとかは考えたりします。夏に冬っぽいものとか、あまりにズレてないように意識する程度ですけど。今回の中に「めがさめたら まつりのどまんなか」っていうのがあるんですけど、ちょうど秋頃になるので採用しました。2月とかだと採用してなさそうです。カレンダーだからといって季節に偏ったイラストになってしまうと、今回のしりとりの企画では、ありきたりになったりおもしろくなくなったりする気がしたので、1年目から季節ものはあんまり入れすぎないようにしています。

―今までのお話の中でも、ニシワキさんご自身が客観的にイラストを見られているような印象を受けますが、何か理由があるんでしょうか?

―今までのお話の中でも、ニシワキさんご自身が客観的にイラストを見られているような印象を受けますが、何か理由があるんでしょうか?

描いたイラストにタイトルのようなものをつけることも多いんですが、あまり“これが答えです”みたいなことはしてなくて、見てくれる人が想像してくれたりするのがいいなと思うので、“なんでこうなってるのかな?”と想像して、クスっとしてもらえたらいいなと描いていたりします。自分でも答えを決めていないので、客観的に見ているのかもしれませんね。 例えば「しめしがつかない おしょうのズルやすみ」というイラスト。この和尚さんだったら、“お寺からだいぶ離れたところでやってそう”とか、“和尚さんに木のくずとかがついていたら、蜜を舐めに行ったとバレそう”とか、自分で描いておきながら想像してます(笑)。

―1つのイラストでストーリーが続いていくような、完結しないような感じですね。

そうですね。普段からそういう1つのシーンを考えたり想像したりする傾向はあるかもしれません。マンガを描くときも、1つのコマを描いて、キャラクターがこう言ってたら、次のコマではこう言いそうなど、想像して絵にすることや話を考えることもあるので、客観的に見るのは結構好きかもしれないです。

―はっきり言わないところにおもしろさや魅力があるような気がします。実際ニシワキさんにお会いした時に1つのイラストについて話をして、自分が想像してたのと違ったらまたそれもおもしろいですもんね。

自分でもはっきり決めてないので、ねこがキャベツを首に挟んでるイラストを見て、「何でキャベツをはさんでるんですか?」と聞かれると、「なんででしょうねぇ、重そうですよね」とか、そういう感じで会話することが多いですね(笑)。

後半へ続く・・・
「色味の変化などイラストに対しての考え方や、お気に入りのイラストなどについて」

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